石屋さんのBlog

「石の魅力、最大限」メイソンケイズのブログです。

建築石材業界の未来を創る -伝えることと壊すこと-

早いものでIT企業の営業マンから畑違いの石工職人になり、5年を迎える。

全体を束ねる立場になり、チームメンバーの幸せ、その家族の幸せを考えるようになり、新たな希望、新たな課題が生まれてきています。

 

これから先、10年後、30年後、次の世代で、業界がどうなっているのか。

今のままでも、仕事に恵まれ、人に恵まれ、職人人生を全う出来るかもしれません。しかしながら、業界を盛り上げるためには、日々改善しなくてはいけません。

我々の業界はとても魅力あるもの。にもかかわらず、まだ世の中に認知されていない。

仕事に対するプライドが湧いてきたんです。

 

建築石材業界の強み

建築石材業界の強みは大きく2つあると思っています。「特別な仕上げ材「高い技術」です。

基礎を作るために、石積みが行われていた時代から形を変え、現在では特別な仕上げ材です。西洋建築に石材を建築物の仕上げ材として用いるようになった明治時代から、天然石にしかない高級感、重厚感のある空間を生み出してきました。そして、天然石そのものが持つ魅力高級である価値感を世の中に浸透させてきました。

 

その高級な石材を取り扱う我々は常に高い技術を求められてきました。建築現場で、紙1枚の誤差を調整しているのは石材業界だけです。

また、最も高級な仕上げ材であることから、設計士・お施主さんが求めるハードルも高く、常に高い技術を要します。

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建築石材業界の危機

最近、満足できる仕事が出来ないでいます。100パーセントの仕上がりで無いからです。

 

直近で、こんなことありました。

400mm✕400mmの規格品の大理石をネムリ目地(目地なし)で壁の施工する仕事を請けました。しかしながら、製品が400mm✕397mmだったり、ひし形の形をしていたりと、とても我々の求められる仕事をする製品ではありませんでした。

できる限りの、仕上がりになったものの、とても満足のいく仕事ではありません。

 

仕事をすることで、得るものは何ですか?

「仕事の対価はお金」では、ありません。「仕事の対価は仕事」です。仕事をすることで、新たな仕事をもらえるのです。元請けはある程度のクオリティを求めていたのでしょうか。

我々は現場職人なので、ゼネコン、元請けの依頼で施工をします。工期・製品・図面・現場、様々な条件が決まっている中で最高のパフォーマンスを発揮します。

当社だけを考えれば、職人技術向上だけを考えればいいのですか、業界の未来を考えると、そうも言っていられないようです。

 

では、建築石材業界に明るい未来を見るには何をするべきなのでしょうか。

 

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価格競争からの脱却

価格競争から最高品質保証へシフトしていかなくてはいけません。品質重視ではありません。徹底した品質管理から、最高の品質保証をする必要があります。

シフトをする上で、必要な項目は3つ。

 

①ブランド維持活動

②施工方法の標準化

③徹底した効率化

 

①は長期的施策、②.③は短期的施策となります。いずれも常に改善が必要な施策です。

 

①ブランド維持活動

品質管理の徹底はブランドを維持するために必要である。

仕事が仕事を生み出すためには、「製品のクオリティ」、「施工のクオリティを確保」、「納期の厳守」を必要とする。1つでも欠ければ信頼を得ることは出来ない。

 

また、情報においても常に気を配る必要がある。石の魅力、取り組みを一般の方に伝播する施策と同時に、施主、設計会社、ゼネコン のニーズを的確にキャッチし、ニーズにマッチした情報を提供していく必要がある。そして、その情報は常に新鮮でなくてはならない。❋具体的な施策は別途

 

 実現すれば、仕事が仕事を生み出すサイクルが生まれる。

②施工方法の標準化

仕上がると、施工方法が全く見えない。随時、設計、ゼネコン、元請けが確認をしているが、計画されている施工方法が現場レベルで初めて間違いであることが発覚することがある。その都度、元請けの石材会社に対して指摘をしている。

これがあまりにも非効率なのである。指摘をした問題を横に展開しないために、同じ失敗を他の図面担当が起こしてしまうのである。

職人、工事、図面、営業、建築石材業界に関わる全ての人間で施工方法を標準化する必要がある。

実現すれば、誤った取り付け、手を抜いた取り付け方法を撲滅することが出来る。 

 

③徹底した効率化

建築石材業界に限られたことではなく、建築業界において、非効率なことが多いように思える。直近の非効率事項を列挙してみる。

 

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・図面は今だに紙媒体が主である

⇒データで共有できる。図面を運ぶ手間も省ける。

 

・不具合の度に、現場にて担当が対応している

⇒現場職人が、写真を添えて内容をデータで送信すればよい。

 

・同業者への伝達がスムーズでない

⇒LINEで、都度見える化

 

・調整事項が職長以外把握できていない

⇒搬入予定や、作業予定をデータで管理し、クラウドで共有すればよい

 

・他の人間が同じミスをする

⇒1人のミスは全体のミス 情報の横展開が出来るポータルサイトを作り共有

 

他の業界では当たり前に行われていることが、残念ながら我々の業界では出来ていない。この非効率な情況を打破しようと、当社で行っている効率化の成功事例を横展開を計画している段階である。

 

実現すれば新たな時間を生み出すことが出来る。

 

 今より昔のほうが

ベテラン職人は、今より昔の方がいい仕事をしていると言う。「いまは難しい仕事が少なくなった」、「いまは手間をかけることが出来ない」という話を良く聞く。

 

ただ、私は悲観をしていない。時代によって様々なことが変化するから。

今の時代に求められている仕事を手を抜かずに施工し続けることで、業界の未来を創ることが出来る。「いつか昔より今のほうが」と言わせたい。

 

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